編集部レポートvol.10【2024年7月】ブルーベリーからまなざす玉川の未来

玉川ダムを有する豊かな水源に恵まれた山あいの地域

今回編集部が訪れたのは愛媛県今治市玉川町。
玉川町はのどかな山間の町であり、農業が盛んな場所。
えひめ・こうち食べる通信は、今回「森のともだち農園」でブルーベリーの栽培を行う森 譲寛(よしひろ)さんにインタビューをしました。

純粋な美味しさを追い求めて

園地のブルーベリーは取材した7月上旬から少しずつ色づき始める

森のともだち農園で採れるブルーベリーは4種類。
“ブライトウェル”と“パウダーブルー”は贈答用に使われるそのまま食べて美味しい品種、“ブルーマル”は酸味がありケーキの甘いクリームと相性が良い品種、“ノビリス”は最高級品種です。
森のともだち農園のブルーベリーは約半分がブライトウェルです。
「ブルーベリーって、柑橘などと違って追熟しないんですよ。お店に並ぶときが一番甘くなるように…と逆算して早めに収穫しておくということができない。かといって完熟の状態で収穫すると出荷から消費者の方に手に取ってもらうまでに傷んでしまうものも出てきてしまう。だからスーパーに並ぶブルーベリーは少し早めに収穫していることもあって、酸味が強いなんてこともしばしばあります」と森さん。
“痛みにくく出荷時の検査で通りやすい”ブルーベリーではなく、森さんは“食べる人の元に届いた時においしい”ブルーベリーを作りたいという思いがあります。
完熟で収穫して次の日には出荷をするため、重要な最後の選別作業はすべて森さんが責任を持って行っています。
森のともだち農園のブルーベリーは「媛ベリー」という名称で販売されています。
これは農園独自の規格を定め、その基準に達したものに付けられるもの。
「純粋においしいものを作りたい」という森さんのこだわりが伺えます。

かごいっぱいのブルーベリーは大粒でむちっとしている

―おいしいブルーベリーの見分け方を教えてください!
森さん「ブルーベリーは、ブルームと呼ばれる表面の粉が白いほど新鮮です。また、柄の部分まで青く色づいているものが完熟に近いです。赤いものはまだ熟れていない。大きさは、品種によって適した大きさがあるので…大きいほど甘いとは限らないですね。」

―(ブルーベリーを食べ比べる)たしかに全然違いますね!ちなみに、おすすめの食べ方はありますか?
森さん「たくさんのブルーベリーを手のひらですくい、一気にわ~っと食べるのがおすすめです。ブルーベリーの甘みが口いっぱいに感じられます!」

ーおお~!これは贅沢な食べ方ですね!例えば今回基本セットに入っている「冷凍ブルーベリー」はどういただくのが良いでしょうか?
森さん「シャリシャリ食感を楽しんでいただくのも良いんですが、ジャムもおすすめですね。冷凍ブルーベリーの方がつぶ感が残っておすすめです。ちなみに、ジャムに酸味を足す目的で赤いブルーベリーも使います。」
森のともだち農園では、最も甘い品種のブライトウェルのみで炊き上げた「媛ベリージャム・極」が販売されています。
ブルーベリー本来の甘さが口いっぱい感じられるこのジャムは、森さんが一本一本丁寧に手作りされています。

森のともだち農園のジャムは全て森さんの手作り

ブルーベリーからまなざす玉川の未来

森さんのお母様が立ち上げた森のともだち農園。
大学進学を機に上京し、SEを目指していた森さんはお父様が倒れたことをきっかけにUターンし農園を継ぐことになりました。
「いつか実家に帰りたいと思っていて、きっかけを探していたんです。何でも楽しめる性格だから家業を継ぐことに抵抗はありませんでした」。
現在はブルーベリー栽培、加工品の他に観光農園、キャンプ場事業、キッチンカーと活動の幅を広げています。
様々なことに取り組みながらも一番の目標は、この玉川という地域をベースとしてやっていくこと。
森のともだち農園だけがうまくいくのではなく、ブルーベリーの栽培を通して玉川地域全体に人を集めていきたいという思いがあります。
「玉川からは将来的にきっと人が減ってしまう。これは他の地域もそうですけど、避けようのない課題かもしれません。それでも、交流人口を増やして、玉川にはこんな自然環境があることを一人でも多くの人に知ってもらえたらいいんじゃないかなって思うんです。母たちの世代がこの地域でブルーベリーとマコモタケを始めたのもそういう想いあってのことなので。今は、
鈍川温泉と連携して導線を作っていくこともプランとしてあって、自分はブルーベリーやマコモタケという食の面から玉川地域全体を来訪者に楽しんでもらうことを目指しています」
森さんの屈託のない笑顔からは地元玉川への想いが溢れています。