学生レポートvol .6|【2024年1月号】宗田節を見て、作って、食べる

今号は高知大学院の柳原伊吹さん、高知大学社会協働学部の田中孝樹さん、松原彩耶香さんが取材に同行してくれました。
学生の立場からまなざす食の生産現場をレポートとして掲載します。

節納屋見学

初めに節納屋見学をしました。
そこではたけまさ商店の島谷真矢さんから最初に宗田節が鰹節とどう違いうのかということを丁寧に教えていただきました。
土佐清水の宗田節は、「メジカ(マルソウダガツオ)」というカツオよりもちいさい魚でできている。私は、土佐清水を訪れるまで鰹節以外にも種類があることを知らなかったため、驚きました。
ちなみにメジカとは「目近」から来ており、ソウダガツオの目が近いことから土佐清水で呼ばれているそうです。

焙乾前にマルソウダガツオの頭と内臓を取り手早く並べる

また、節納屋見学の最中には、だしを取る用の宗田節がどの宗田鰹から取ることができるのかを見分ける体験をさせていただきました。
あたり一面に宗田節の香りが広がり、その場の雰囲気を一層華やかになりました。

脂の少ない宗田節を選ぶのは至難の業

だしを取る用のものは脂がのっていないものだと教えていただいたが、どのような特徴で見分ければよいのか難しかったです。
一瞬で見分けることができるようになるには5年ほどかかるようであるが、島谷さんは、簡単に素早く見分けられていました。
私は、島谷さんが長い間、宗田節に関わってきたということと仕事への熱量を感じました。

良い節を選ぶコツは日向に背を向けない状態で選ぶこと

 

うま味醤油づくり体験

だしの郷たけまさ商店に移動して「うま味醤油づくり体験」に挑戦。

透明の醤油を入れると日に日に出汁が染み出していく様子がわかる。醤油を入れて3日経過した頃から使うとよい

節から背骨と細かな骨を取り除き、瓶に節を入れます。
鉛筆をカッターで削る要領で進めるのですが、慣れない作業に若干手間取りながらもなんとかクリア。
その後、瓶を醤油で満たせば宗田節の出汁が醤油に染み出してだし醤油ができあがりです。

オリジナルボトルにしていく作業も没頭できて面白い

その場で瓶に思い思いのイラストを描き、飾り付ければオリジナルボトルにしていきます。
帰宅後、醤油を早速入れて出汁醤油を使いながら育てています。
出汁が出て奥深い味わいになっています。

完成したボトル。それぞれの個性が垣間見える

節を削り、味わうことで見えてくること

昼食はその場で実際に宗田節を削り、ご飯に乗せていただいたり、お味噌汁やそばで宗田節の出汁を感じたり、メジカ(マルソウダガツオ)を存分に味わいました。
宗田節削り体験で、実際にカンナで自分達が食べる宗田節を削らせてもらいました。
思ったよりも硬く、また慣れない作業だったこともあり、かなり削るのに力が必要でした。

カンナで節を削る新鮮な体験。かつては各家庭にカンナがあり、出汁を取る際に使っていたという

削った宗田節は、ごはんに乗せ、宗田節で味をしみこませたしょうゆを上からかけていただきました。
宗田節は普段食べている鰹節よりも香りが強く、厚切りのおかげかしっかりとした噛み心地で強い味わいでした。
醤油も宗田節の味がしっかりしみ込んでいて、うまみが口の中で広がります。
料理を作ってくれたのは女将さん(早苗さんの母)。
「ぜひ、宗田節の良さを多くの人に知ってもらいたい」と語っておられて熱い思いがこうして脈々と受け継がれているのを感じました。
また、この体験を通して食の生産現場や地域を知り、実際に味わってみるという流れがとても素敵だと思いました。
体験を通して宗田節のおいしさはもちろん、つくり手の熱い思いも味わってもらいたいです。

自分で削った宗田節で白ご飯をいただく贅沢…!

取材を終えて

取材を通して、たけまさ商店の和やかな雰囲気を感じることができた場面が2つあります。
一つ目はお話をされている最中、時折、夫婦同士が突っ込みを入れながら話されていた場面です。初対面であるにもかかわらず、このように取材を快く受け入れてくださったことに人柄の良さを感じました。
二つ目は、お客さんが来た時に真矢さんがすぐに立ち上がって、対応に入った場面。お客さんはその日お休みの従業員さんで、真矢さんはとてもにこやかに話されていました。真矢さんは大阪から移住してきたとは思えないほどフランクに地元の方とお話していて、まるで元から土佐清水にいたかのようでした。その理由は、一人一人を大切にしようとしている姿勢にあるのかもしれません。
また、たけまさ商店は宗田節を使っただしスープ(老舗鰹節屋が考えた Dashi Pota)の素を開発しており、より多くの人に知ってもらいたいという構えを実行に移されているところがすごいなと感じました。
今後、これからさらに宗田節とたけまさ商店の活動がより広く世間に知ってもらえればいいなと思います。
(田中孝樹/高知大学地域協働学部)

このインタビューを通して、早苗さんが旦那さんと出会い土佐清水に戻ってきたことから、宗田節から生まれた人のつながりや出会いがあることを実感し、心が温まりました。
取材の中で真矢さんが「近くにあるものの本当の良さにはなかなか気づくことができないから、その良さがわかる自分がバトンになり、宗田節の魅力を引き出していきたい」といっていたことがとても印象に残っています。
また、自分が気づいていなかった地域の良さを違う地域の方によって知ることができ、その魅力をこれからもつないでいこうとしている二人の姿がとても素敵だと思いました。
このように、地域の食材が人と人をつなぐ役割をすることに気づき、人をその地域に呼び寄せる力があるという可能性を感じ、食文化は大切にしていくべきであると感じます。
(松原彩耶香/高知大学地域協働学部)