学生レポートvol.12|ディロンさんとハタペーニョ

≪今回は高知大学地域協働学部の学生編集部による学生レポートをお届けします。≫

高知県幡多郡黒潮町。
水平線が望めるこの場所はサーファーのホットスポットでもあります。
そんな海の側にある「幡多サーフ道場」。
オーナーのブルース・ディロンさんにはサーフコーチともう一つ、ハラペーニョ農家の顔があります。

ハラペーニョを高知で育てる

ブルース・ディロンさんは、オーストラリアのゴールドコースト出身。
ゴールドコーストは長い砂浜が特徴で、世界中からサーファーが訪れる有名なサーフスポットです。
ディロンさんも若い頃はサーフィンに明け暮れ、サーフィンスクールを開設し、インストラクターとしても活躍していました。
また、このころメキシコ料理店で働いていたディロンさんは、メキシコ料理でよく使われるハラペーニョの魅力に夢中になりました。

ディロンさんが幡多の海と出会ったのは25歳の頃。友人に会うために来日し幡多を訪れた際、サーフィンに最適な波がある幡多の海岸に惹かれ、1995年に幡多に移住することを決意しました。
移住後、メキシコ料理などの辛い食べ物が恋しくなってしまいましたが、日本ではハラペーニョを手に入れることが難しいことに気が付き、自分の手で育ててしまおうと1998年に幡多でハラペーニョの栽培を始めました。
幡多の大地は、ハラペーニョの栽培に適していたのです。
また、2005年には「幡多サーフ道場」というサーフィンスクールを開設しました。
私は、ディロンさんの様々なことに興味を持ち、挑戦する姿勢が印象的でした。

今回お話を伺ったのはブルース・ディロンさん

想いが形になった「ハタペーニョ」誕生秘話

 ディロンさんのハラペーニョづくりは、約18年前に高知県幡多郡での家庭菜園から始まりました。オーストラリア出身のディロンさんは辛い物が大好きでしたが、当時、幡多郡ではハラペーニョを手に入れるのが難しかったため、自ら栽培することを決意しました。
最初の2、3年間は自分用に育てていましたが、友人たちにお裾分けすると、その独特な辛さと美味しさが好評となり、「欲しい」という声が次々と寄せられるようになりました。
食べてもらい、美味しいと言われる喜びからディロンさんは、販売を視野に入れるようになったのです。

また、「友達を増やしたい」という思いも動機の一つでした。ハラペーニョは、友人との交流を深め、新たなつながりを生むきっかけとなったのです。
こうして、高知県幡多郡で育てられたハラペーニョは、「ハタペーニョ」として販売されることになりました。
その中毒性のある辛さは、特に辛いもの好きの日本人には大人気で、ハマると止められなくなると評判です。

幡多地域で育ったハラペーニョを“ハタペーニョ〟と命名

地域の人との対話の架け橋に

ハタペーニョは、地域の人々とのコミュニケーションツールとして大きな役割を果たしています。
ディロンさんは「育てることも作ることも好き。食べてもらえたら嬉しい。」と語ります。
プロモーション活動はほとんど行っておらず、主に声をかけられることが多いそうです。
さらに、ディロンさんの友人が経営する飲食店でハタペーニョを使ったオプションやコラボメニューが提供されており、地域の飲食の新たな価値創出の貢献につながっています。

高知大学地域協働学部のみなさんとの取材風景

ディロンさんにとって、ハタペーニョを育てることは農業ではなく、趣味の一環です。
ディロンさんは自給自足が好きで、ここにはない食べたいものをつくることを大切にしています。
ハタペーニョは売りたいものとして育てられているのではなく、自分の好きなものを追求し共有するためのものなのです。

 

farmerじゃない、だけど農業が好き。

「もともとfarmerじゃない。農業得意じゃない。けど好き、もっと勉強したい」
ディロンさんの園地でハラペーニョ栽培の様子を見学させていただき、工夫やこだわりを知ることができました。

まずは、土のこだわりです。ハラペーニョはずっと同じ土地で育てるのではなく、4つの畑をローテーションで育てています。
2,3年土地を休ませることで、よりおいしいハラペーニョを育てることができます。

次に、天敵への工夫や備えです。
ハラペーニョ栽培にとって天敵は台風です。
台風が来るとハラペーニョが風で倒れてしまい、去年は4分の1がダメになったそうです。
もともと「幡多サーフ道場」の隣の畑で栽培していたのですが、台風の強風を直に受けてしまうことが問題点でした。
そこで、ディロンさんは木々に囲まれた畑に場所を移し、強風の影響をできるだけ少なくすることにしたそうです。

もともと家庭菜園から始めたハラペーニョ栽培も、現在は年間700~800kgも収穫できるようになっています。農業を「食べたい」「自給自足が好き」から始めて、趣味として続けているディロンさんは、勉強しながら農業をしているそうです。

「こうやって話しかけてる」とハラペーニョを見つめるディロンさんの横顔はとても優しい

編集後記

今回のインタビューを通じて、私は初めて幡多のハタペーニョを知り、試食を体験しました。
辛い食べ物が苦手だった私ですが、ハタペーニョは予想以上に独特な風味で、ピクルスのような酸味と控えめな辛さが心地よく、美味しく食べることができました。
この経験から、辛いものが苦手な人やハタペーニョを知らない人にもその魅力を伝えたいと強く感じました。
具体的には、高知大学の学生にレシピアイデアを募り、学食メニューに取り入れることで、ユニークな料理を提供し、認知度を高めるなどです。
また、ハタペーニョ料理を提供する飲食店を紹介する「ハタペーニョカタログ」を作成し、多くの人々にその魅力を広めたいと考えています。
このインタビューを通じて、ハタペーニョの新たな可能性を考える楽しい時間を過ごしました。