≪今回は愛媛大学社会共創学部山口信夫ゼミの学生編集部による学生レポートをお届けします。≫
愛媛県久万高原町。
冬のひんやりとした空気をまとうこの町で、原木しいたけと長年向き合う恩地義浩さんにお話を伺いました。
つくり手・恩地さんについて
恩地さんは夫婦二人三脚で一年を通して原木しいたけを栽培しています。
東京の大学に進学後、群馬県で勉強し、愛媛へ戻ってきてこだわりのある原木しいたけを育てています。
負けん気が強く、東京で出会った仲間たちに負けないくらい頑張ろうと決意しました。
生しいたけの他にも干ししいたけやパウダーとしても販売しており、加工品は主に娘さんが担当しています。
こだわりの強いしいたけを10年先も作り続けていきたいと語る恩地さんは、きのこへの愛にあふれていました。
そして、注文に生産が追い付かず大変な中でも、なんとかお客さんの要望に応えようとする、思いやりのある人柄にふれることができました。
1日・1年のスケジュールについて
自然豊かな久万高原町でこだわりを持ってしいたけを栽培している恩地さん。
どのようなスケジュールでしいたけを栽培しているのでしょうか。
夏と冬で忙しさは異なりますが、恩地さんの1日のリズムは決まっています。
しいたけの成長が早い夏場であると毎日4時30分から5時ごろに起床、着替えてすぐに収穫へ向かいます。
しいたけの成長がゆっくりである冬場は6時ごろに起床して、2日に1回の収穫になることもあるそうです。
朝の収穫が終わると荷造りや梱包作業をして再び収穫に向かいます。
週に3回ほどは納品で松山などへ赴くこともあるそうです。
恩地家では食事の時間は決まっており、特に夕食は必ず17時30分。
作業の途中であっても切り上げて自宅へ戻ります。
また、しいたけのいいところは収穫のタイミングを調整できること。
あらかじめ成長のスピードを考慮して仕込みをすることでまとまった休みを取ることができ、旅行に行くこともできるそう。
ワーク・ライフ・バランスも実現できています。
栽培品種について
恩地さんの農場で大切に育てられているしいたけは5種類あります。
その中で冬にメインで育てられているしいたけを3つ紹介します。1つ目は「しいたけ290号(通称:にく丸)」。
「290号」は日本で一番使用されているしいたけで、原木しいたけ生産者の多くの方が使用しています。「290号」は肉厚などんこ(冬菇)が出来やすく、味や形など全体的にバランスが取れていることが特徴です。
2つ目は「こうたろう」。「こうたろう」は触ってみると柔らかく、なかなか手に入ることができない幻のしいたけだそうです。
しいたけ嫌いの方が「こうたろう」を食べてしいたけの虜になるほど絶品です。
3つ目は「金太郎」。
「金太郎」は身が締まっていて、コリコリとした食感の肉厚しいたけです。
「金太郎」は食感が一番味わえるきのこで「しいたけステーキ」に適しています。
※どんこ(冬菇)とは傘の巻き込みが強いしいたけのことを指します。
〝おんじのきのこ〟ができるまで
しいたけができるまでの工程としてまずは山の木を切り、葉枯らしをします。
葉枯らしは、木の水分を55%ほどに落とし菌が繁殖しやすくするために行います。
山で玉切りを行い、植菌を行いホダ木にします。その後ホダ木をハウスなどに運ぶホダ木おろしが行われ、施設に運びます。
しいたけは5〜32℃の気温で成長するため暑すぎても寒すぎてもいけません。
夏は外で、冬はハウスで育てて環境を整え、しいたけが育つのを待っています。
そうすると、夏は1週間ほどでしいたけが育ち、収穫が可能になります。
しいたけは5度以下になると自分を守るために菌が動かなくなります。
そのため冬は気温が上昇した昼にゆっくりと成長していきます。
寒暖差を利用しながら育てることにより旨みが凝縮されたしいたけが収穫できるため、冬のしいたけは特別おいしいのだとか。
クヌギ・ナラなどの原木に囲まれた、地域資源あふれる久万高原町。
そんな自然豊かな土地で恩地さんの手によって細かく管理され、こだわりを持って育てられた原木しいたけは、森の養分がぎゅっと詰まった安心・安全な絶対的なおいしさを持っています。
こだわりいっぱいの恩地さんのしいたけは、消費者からの信頼度も高く、スーパーや産直市に並んだ際は、すぐに無くなり出荷を催促されることがほとんどです。
今後は、「恩地さんのしいたけが食べたい。このしいたけじゃないとダメだ。」と思ってくれている人に、最高品質のおいしいしいたけを届けたいという真っ直ぐな思いを教えてくださいました。
現在は産直売り場への出荷だけでなくしいたけパウダーへの加工も行っています。
恩地さんはこれからも、しいたけ作りに活気を与え続けるでしょう。