編集部レポートvol.7【2023年11月号】さんなべようけいの平飼い有精卵

今回編集部が訪れたのは県四国中央市切山地区。
香川県との県境で標高およそ450m。
かつて平氏の落人たちが身を隠したとも伝わる山深いこの地は、空気が澄んでいて思わず深呼吸したくなる。
そんな場所で自然に近い環境で養鶏をする「さんなべようけい(参鍋養鶏)」の平飼い有精卵について取材しました。

さんなべようけいの「平飼い有精卵」を食べる

愛情の注がれた卵を割る。
阿部さん、参鍋さんの顔が思い浮かびました。
自然の環境で、自然由来にこだわった飼料、そして存分に注がれた愛情。
今日一番の緊張と気持ちの高ぶりを感じながらコンコンと卵を叩いて、炊き立てのご飯の上に割り入れました。参鍋さんのお勧めの食べ方は「卵かけご飯」です。

卵かけごはんは卵本来の味を堪能できるシンプルかつ贅沢な食べ方

白いご飯の上に黄金色の黄身。
一度はやってみたいと思っていた、卵の黄身を箸で掴んでみました。
すると潰れることなく持ち上がり、ご飯の上へと戻っていくことに驚きます。
醤油を少しだけ垂らし、一口。
卵の濃い味が広がり、心から「美味しい」と感じました。
白身はコシがあって口の中にスルスルと入っていき、箸を持つ手を助長します。

弾力のある黄味はお箸で掴むことができるほど

「参鍋養鶏さんの卵は白身にコシがあるから、焼き菓子を作ったとき、ふわっと膨らむ。食べたときのふわふわな食感は他の卵では出来ないです。」
そう語るのは四国中央市にあるG.B.Cチョコレートファクトリーの山口さん。
参鍋養鶏へカカオ粕を提供し、飼料に使用されています。
卵の値段高騰が叫ばれる中、鶏の事を考え抜いてこだわりを持ちつつ、試行錯誤を繰り返している参鍋養鶏さん。
「分かる人の元へ届いてほしいです」この思いを真摯に受け止めながら残りの卵かけご飯を食べつくしました。
文面では伝わりきらない参鍋養鶏の卵の味。
是非ご自身で手に取り、食べてほしいです。

さんなべようけいのこだわり 美味しさと安心の理由

①自然に近づけて育て上げる
参鍋養鶏は一つの鶏舎につき約900羽、雄と雌が同じ空間におり雌20羽に対して雄1羽の割合です。
「生後2日からのひよこを雄と雌、同じ空間で育てています。雌だけの無精卵での販売もありますが、雄と雌が共存しているのが自然界に近いと考えています。有精卵と無精卵の科学的な違いは証明されていません。でも、鶏にとって過ごしやすくてストレスの少ない環境を整えることで、安心して卵を産んでもらうことができると思っています。」

茶色が雌鶏で白色が雄鶏

②自由に動ける環境を作る
ゲージ飼いと平飼いでは1人当たりの飼える鶏の数が違うと言います。
「掛かる費用や手間を考えたらゲージ飼いの方が良いと思います。ゲージ飼いでは土地が狭くても上にゲージを積み上げることで1人、1万羽飼えるといわれていますが、平飼いだと1人600~1000羽です。そういったことを踏まえても、鶏に安心して卵を産んでもらうために自由に動き回れる環境は必要だと考えていますし、先代からのこだわりです。動く分、沢山の餌を食べます。健康な鶏が生む卵だからこそ美味しいものになるんだと思います。」

のびのびと動く鶏たちは元気いっぱい

③自然材料の飼料で安心な卵
鶏飼料は約15種類の自然材料の飼料を与えており、薬品類などは一切使用していません。
「市販の飼料は鶏専用に作られていて栄養バランスも完璧だけど、人口ビタミンなどの人工物が配合されています。しかし、鶏が食べたものが卵となり、私たちの口に入るということを考えると、安心して食べてもらえるように自然のものを与えたいという先代からのこだわりを時代に応じて試行錯誤しつつ継承しています。」
普段から鶏の事を観察し、接しているからこそ体調の変化に気が付き、配合の調整を可能にしています。
「自家配合の最大のメリットはどんなこだわりの飼料も作ることができることです。ヒナの頃はカロリーが高いものを多く入れて成長を促したり、鶏の様子や体調、気温を考慮しながら自分で作ることができます。」

飼料は常にいいものを。日々配合バランスや素材を考え試行錯誤している。

※読みやすさの観点から見出し以外では「さんなべようけい」を「参鍋養鶏」と表記しています。