編集部レポートvol .11|【2024年9月号】

長生(ながおい)沈下橋は西土佐に架かる沈下橋のひとつ。

今回編集部が訪れたのは高知県四万十市西土佐。
愛媛県松野町との県境に面する山合いの地域です。
清流四万十川と沈下橋はこの地域一帯の原風景。
えひめ・こうち食べる通信は、今回「山間屋」でを行う中脇 夢之進(ゆめのしん)さんにインタビューをしました。

山の問屋「山間屋」の役割

山間屋のはじまりは、夢之進さんの母・裕美さんが旧西土佐村役場に勤めていた約18年前に遡ります。
当時、村役場の職員として地域住民と取り組んだ特産品開発。
そこで生まれたのが「山間米」と「いちごようかん」です。
(※「えひめこうち食べる通信9月号」の基本セットに山間米、オプションのAセットにいちごようかんが含まれます)
裕美さんは、役場勤めではいずれ部署異動の時にこの事業に関われなくなること、
その為に特産品開発をしても続かずに途絶えてしまうことを危惧して早期退職。
販路の獲得や、ラインナップを充実させるための商品開発、地域の素材を使ったケーキ屋「ストローベイル」の立ち上げ…
生産者の作るものが正しく評価され、選ばれるものになるために試行錯誤しながら「山間屋」として地域に携わっています。
息子の夢之進さんが加わったのは2016年のこと。
「母の取組みも、地域の生産者のみなさんのことも知れば知るほど残しておかなければと思いました。僕たちの仕事は西土佐に生産者がいないと成り立たない。でもそれは完全に依存するのではなくて、持ちつ持たれつの健全な関係でないといけないんです。彼らが食べものを作るなら、それを手に取ってもらえるものに落とし込んでいく、販売ルートを開拓する…生産者のみなさんが全力だからこそこちらも応えなくてはと日々気が引き締まります」。

左が中脇夢之進さん、右が母の裕美さん

世間は米不足、西土佐は…?

2024年の夏。
需要と供給のバランスが崩れた都心部は、一時「米不足」に見舞われました。
更に地震や台風により備蓄用の買いだめの機運も高まり、連日品薄状態が続きました。
一方で西土佐では…
「担い手の減少による収量減はありつつも、米不足には陥りませんでした。オンラインストアには様々な地域から問い合わせがありました」と夢之進さん。
「実際にお米を発送すると、注文してくれた方から『美味しく頂いています、本当に助かりました』とメッセージが届きました。こういう時に食べものを作る生産者の力を改めて感じましたね」。
都市部と地方が見えない何かで繋がる感覚があったといいます。
生産者が食べものを生産し、人々の生活を支える。
消費者はそれを購入し、食べることで買い支える。
実は相互関係にありながらも、普段はそのことに気が付きにくいものです。
「きっと偶然山間屋を見つけてくれて、どうやらここにはお米があるぞと選んでくれたのだと思いますが、こういうある種の危機を一緒に乗り越えた経験やご縁は大切にしたいですね」。