今号は愛媛大学社会共創学部山口信夫ゼミのみなさん([3回生]川上和月さん/小松美雨さん/原田実乃里さん、[2回生]佐野蒼介さん、篠原悠希さん、渡邉亜美さん)が取材に同行してくれました。
学生の立場からまなざす食の生産現場をレポートとして掲載します。
一粒一粒違うのがたまらなく愛おしい
私たちが苺園へ訪れると笑顔で迎え入れてくれた井上洋平さん、衣美さんご夫婦。
お二人とも大三島出身。
洋平さんのご両親が苺園を営んでおり、「将来的に苺園をたたもうと思う」と告げられたことをきっかけに、後を継ぐためにUターンしました。
観光農園としていちご狩りをしていたことから、島に来て笑顔で帰っていくお客さんを悲しませたくないと思い、いちご農家を継ぐことを決意したそうです。
洋平さんの前職は電気機械関係。
取り扱う製品は同じものを同じ品質で大量生産することを求められていたそうです。
しかし、いちごは機械とは異なり、同じ株であってもそれぞれ違った形、違った色づき方をします。
当初は苦戦することもありましたが、命あるものゆえの個性に気づきその面白さを感じるようになったそうです。
地域と「誰か」を繋ぐ場所
また、井上苺園は地元の人とIターンで来る若者をつなぐ役割も担っています。
地元の人とIターンで大三島に来た人も一緒にいちご園で作業をしており、そこには地元の人とIターン者の交流を大切にしたいというの思いが込められています。
「Iターンしてきた人の中には、なにかしら目的があって移住される方が多いのですが、連れ添って移住したご家族は『自分の目的はまだはっきりしていないけど何かしたい…!』という方も少なくありません。そういう方たちの受け皿になれたらなって。すごく意識しているわけではなくて、自然とそうなったというのが正しいかもしれません。特にここで作業している地元の方々は両親の代から手伝いに来てくれていて、島の事ならなんでも知っています。だからここで一緒に作業しながら打ち解けて、日常生活で困ったことがあれば相談したり…コミュニケーションの場にもなっていると感じることがあります」と衣美さんはいいます。
また、衣美さんには「お店を開きたい」という希望がありました。
現在、キッチンカーという形でその夢を叶えています。
いちごのシーズン外のときはイベント出店もしており、キッチンカーがきっかけで大三島に来てくれるお客さんもいるのだそう。
キッチンカーはおしゃれでとてもかわいく、取材時にいただいたいちごのジェラートは絶品でした。
今は愛媛県と広島県のお客さんは半分ずつで、あまおとめという品種は愛媛県では認知度が高いが広島では低いため、広島県から来たお客さんはあまおとめの甘さに驚く方も多いようです。
今は道の駅やスーパーでも販売しており、地元の方からの認知度も上がってきています。
「これからはもっと地元の方や、周辺の地域のお客さんに知ってもらい、一回来て終わりではなく何度もリピートしてほしい」と井上さんは願っています。
地域と移住者、観光客、そして井上苺園の苺を食べてくれる人へ…井上さんたちのアイデアはどれも地域と「誰か」を繋ぎます。
毎日夫婦でいちごの話をするほど、いちごのことを大切に考えており、それと同じぐらい地元大三島のことも大切に想っています。
大切に育てられたいちごをご堪能あれ。